読書の楽しさを教えてくれた本『ノルウェイの森』と『パンティーの消滅』と『龍の監視』

ノルウェイの森 村上春樹

忘れもしない。僕が読書の楽しさを知ったのは16歳の夏。

彼女ができたことに喜び、彼女と喧嘩して怒りは頂点に達し、彼女に振られて哀しみ、彼女を作ることに楽しみを見つけ、いろんなことが目まぐるしく変わり、いろんな経験をしなくてはいけない、そんな不安定な時期。

人はそれを青春と呼び、懐かしむ。そして、あのときに戻りたいと言う。僕はまっぴらだ。

そんなまっぴらな夏休みにベッドで横になりながらラジオを聴いていたときだった。言っておくけど、テレビが無かった訳じゃない。そのときも、文明は開花していたし、もちろんインターネットもあった。

ラジオを聴いていたのは、好きなアーティストの番組がラジオでしか聴けなかったからだ。

その回の放送では、最近読んだ面白い本を紹介するつという企画だった。それまで読書した経験はほとんどなかったけど、好きなアーティストがオススメすると言うのだから聞くしかない。は

今までに読んだ本を挙げるとすれば、中学生のとき読んだ金田一耕助だ。今考えると、自分でも渋いと思う。たぶん理解なんて出来ていなっかたんじゃんじゃないかと思う。誰にでも背伸びしてみたい時期ってものがある。

ラジオの中のあアーティストは話しはじめた。「最近、ノルウェイの森を読んだんですよ!」とノルウェイの森について熱く語りはじめた。

それからと言うもの、『ノルウェイの森』と言うタイトルが頭から離れなくなってしまった。

何でかは分からない。響が良かったからかもしれないし、または、そういう年頃だったのかもしれない。

作家の名前はとっくに忘れてしまった。仕方がないので顔を石鹸で丁寧に洗い、熱いお湯で髭を剃り、朝食に熱いコーヒーとサンドイッチを食べてから調べてみた。

もちろんスマホはない。だけど、携帯電話はあった。さっきも言ったが文明は開花していたからだ。でも、人はそれをネットとは呼ばなかった。人々はそれをiモードと呼んだ。

判明したのはノルウェイの森の著者は『村上春樹』だとわかった。知ったからには、読まないといけない気がしてきたし、残念なことに欲しいと思ってしまうと、買わずにはいられない性格なのだ。精神衛生仕方のないことだ。

僕は原付に乗り、友人に手を振り、東名の側道を走り抜け、以前パンティーが散乱していた山を越え、ブックオフに向かった。

今でもあのパンティーは何だったのかな?と不思議に思うことがある。下手をしたら100枚じゃきかない。その色とりどりのパンティー達が、雪に残った足跡のように道に沿ってポツン、ポツンと置かれていた。

帰りも同じ道を通ったけれどパンティー達は跡形もなく無くなっていた。あの『パンティーの消滅』ほど怖いと思ったことはない。

お化けや霊やパラレルワールドが怖いのではない。もしかしたら、あの真っ暗な夜道にパンティーが好きな人間がパンティーを抱えながら潜んでいたかもしれないからだ。もしかしたら、ヤツは隙間からジッと僕の行動をうかがっていたのかもしれない。

この世で1番怖いのは人間だと言う。同意する。けれど、それが、パンティー男ともなればなおさらのことだ。

駐輪場に原付を止めて、店内に入ると僕は『む』を探した。

ブックオフの素晴らしいところは出版社がバラバラでも『む』を探せば『む』と名のつく作家に瞬時に出会えることだと思う。

『む』を探すと村上春樹の作品が並んでいた。さすがに人気作家だけあって、他の作家よりたくさんある。ノルウェイの森ももちろんあった。

救出してレジに向かう。しかし、そのときだ。

何気なく大きな本の牢屋を見るとそこにも『ノルウェイの森』とあるではないか?

眺めていると、その本は手に持っている本よりも、立派な気がしてきた。美大生のような気がした。

僕は『赤』と『緑』の立派な本に惹かれてしまったのだ。立派な本にしない理由はない。

僕だけかも知れないがこの際だから言ってしまおう。村上春樹を連れ帰るときにはいつも「龍」の無言の圧力を感じてしまうのだ。龍はいつも春樹のファンを監視していて、「俺は?」と言っている気がするからだ。

龍は承認欲求が強い。春樹によれば、龍は10人いれば10人に好かれたいタイプらしい。その反対に春樹は10人居ても2人が好きになってくれれば良いというスタンスらしい。

そんな龍が監視しているのだから、圧力を感じるのにも無理はない。龍の圧力を回避するには極力意識しないことだ。

またはそっと春樹との境目にドーナッツみたいに空洞を作ることで回避できるかもしれない。抜き取った本は『罪と罰』の隣に並べてしまえばいい。龍もきっと喜ぶ。

それでも気になるなら大人しくAmazonで買おう。はじめは『村上』で検索すると村上龍が最初にでてきてしまうかもしれない。でも、しばらくすると龍の存在は消えてなくなる。AIと言う文明の理は龍のためにあるのかもしれない。

ノルウェイの森は面白くなかった。でも、惹かれた。本を読んで映像が鮮明に浮かびあがるのははじめての経験だった。映画を見ているような体験だった。感情移入しすぎて泣いたかもしれない。

それから、ノルウェイの森は読み返すことは一度もない。けど、「わたなべくん」「なおこ」「みどり」「レイコ」と内容も思い出すこともできる。

読み返すことがないのは、やっぱり面白いと思わなかったのだと思う。それは間違いない。けど、面白いと惹かれるのは違う気がする。

面白いと思うのは何回でも読めるけど残らない。惹かれるのは、一回だけで残る気がする。ノルウェイの森もそんな惹かれる小説なんだと思う。

本屋にある村上春樹の本を読み尽くすまでの5年間くらいが僕の人生で1番楽しい時期だった。好きな作家と出会ったときの幸せは計り知れないものがある。

今はノルウェイの森からすべて読み直そうと思っている。今読んだら受け止めかたも変わるかもしれないし、それ以上にあの楽しかった時期のように本を読みたいという期待もあるのかもしれない。

「本は読んだ方がいいぞ。」なんて年寄りの説教くさいことは口が3つあっても言えないし、足を使ってでも阻止したい。けど、好きな作家、本を見つけたら少しは人生楽しくなるんじゃないかとだけは言ってもいいんじゃないかと思う。

僕にとってのノルウェイの森は、あの時の記憶を鮮明に思い出せせてくれたり、読書の楽しさを教えてくれた大事な本として今も本棚に君臨し続けている。

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サワ
本が好き。忘れないように記録に残そうと思う。 「好き」「この本」を英語にしてみたらLikeThisbookとなった。戻れるのなら戻りたい。少しでもマシになればと『本好録』とした。もう何がなんだかわからない。気になったら気にしてしまうタイプなのだ。